熱処理とは? 加工方法や種類、メリットなどを解説!
- 技術紹介
熱処理とは
熱処理とは、金属を加熱することで、その材料特性を変化させる加工方法です。
鉄鋼材、非鉄材問わず様々な材質で熱処理は実施されていますが、特に鋼の熱処理は様々な種類があり、その用途によって使い分けられています。
今回は、鋼の熱処理についてご説明させていただきます。
鋼の熱処理
鋼とは、炭素量が 0.02 ~ 2 wt%程度の鉄鋼材のことを指します。
原則として、炭素の量が多いほど、鋼は硬くなります。ただし、そこには複雑な要素が絡むので、適正な材料の選定や、最適な熱処理条件というものが必要になってきます。
鋼の熱処理の種類として、代表的なものに以下があります。
◾️焼きなまし
加熱した鋼を、ゆっくりと冷やす(炉冷)処理です。鋼を柔らかくしで加工性を向上させたり、塑性加工で変形した金属組織を回復させたりすることが主な目的です。
焼鈍やアニーリングとも呼ばれます。
完全焼きなましや球状化焼きなまし、応力除去焼きなましなど何種類か処理方法があり、目的に合った適切な処理の選択が必要です。
◾️焼きならし
加熱した鋼を、室温で冷やす(空冷)処理です。焼きなまし同様、塑性加工で変形した金属組織を回復しますが、焼きなましに比べ、金属組織の微細化が得られ、ある程度の強度を得られます。
ノーマライジングとも呼ばれます。
◾️焼入れ
加熱した鋼を急冷する処理です。焼入れをすることで、マルテンサイトという非常に高い硬度を持つ組織に変態させることができます。材質によって、急冷の冷却方法が異なり、水で冷やす水冷、油で冷やす油冷、ガスで冷やすガス冷などがあります。
◾️焼戻し
焼入れした鋼は、そのままだと硬すぎて、脆くなっている状態です。焼入れした鋼を、製品として使用できるまでの靭性を持たせることを目的として、焼戻しを行います。焼戻しには、低温焼戻しと高温焼戻しがあり、材質や製品の使用用途によって使い分けられます。焼入れ+高温焼戻しを行うことを「調質」と呼ぶこともあります。
熱処理炉の種類
熱処理炉は、大別すると、連続式とバッチ式に分けられます。
連続式は、炉内を決められた温度分布で均熱しておき、製品がその中をコンベアなどで通過していくことで熱処理を行う方式です。入口と出口が分かれているので、製品をどんどん投入することができ、簡易的に自動化することができるため、効率の良い処理が可能です。ただ、処理条件を細かく変更することが難しいため、大量生産向けの方式となります。
バッチ式は、閉じられた空間の中で、温度をコントロールしながら熱処理する方式です。プログラムを組めば様々な熱処理条件を設定できるため、自由度が高い方式です。ただし、1回の処理を行うための荷姿の作成や仕掛け取り出し作業などを行わなければいけないので、大量生産という面においては連続式に劣ります。少量多品種生産に向いている方式です。
当社では、連続式・バッチ式のどちらの炉も所有しており、大量生産/少量多品種生産のどちらにもご対応可能です。
熱処理の雰囲気
熱処理における雰囲気とは、炉の中に充満している気体のことを指します。
大別すると、空気のままで加熱する大気炉、専用のガスを充満させて加熱する雰囲気炉、真空状態で加熱する真空炉があります。
◾️大気炉
処理するための前準備も必要なく、特別な設備も必要ないため、最も簡易的でコストも少なくできます。ただし、高温になると、鋼の表面と空気中の酸素が反応し、表面にスケール(酸化物の層の膜)を形成したり、脱炭(表面の炭素量が減少する現象)を発生します。
◾️雰囲気炉
工業用の熱処理炉としては最もメジャーです。使用するガスは様々で、そのガスの特性によって、浸炭(表面の炭素量を増加させ、より硬くする処理)や窒化(表面に窒素を含ませてより硬くする処理)など特別な処理を行うことも可能です。ただ、雰囲気炉はガス量の精密なコントロールが必要となり、相応の設備が必要となります。
◾️真空炉
真空炉は、真空引きしながら加熱するため、ガスが製品に与える悪影響を完全に排除できることがメリットです。そのため、表面肌の仕上がりがきれいな製品を作ることができます。一方、複雑な装置が必要になるため、加工費、設備費、メンテナンス費などが高くなってしまうことがデメリットです。
三和ニードル・ベアリングの熱処理
当社は、以下の熱処理設備を所有しております。
種類 | 台数 | 雰囲気 | 冷却 |
メッシュベルト式連続炉 | 3 | アルゴンガス
窒素ガス |
空冷 |
大気焼戻炉 | 5 | 大気 | 空冷 |
真空炉 | 2 | 真空 | 加圧空冷 |
真空浸炭炉 | 2 | 真空
アセチレンガス |
油冷 |
油焼入炉 | 1 | 窒素ガス | 油冷 |
サブゼロ装置 | 3 | 液体窒素 | – |
当社は、マルテンサイト系ステンレス鋼の焼入焼戻を得意としておりますが、幅広い材質・処理条件にご対応できます。
◾️焼入れ焼戻し
合金鋼 | SCr435 | SCM435 | SUJ2 | など |
ステンレス鋼 | SUS410 | SUS420J2 | SUS440C | など |
◾️溶体化処理
ステンレス鋼 | SUS304 | SUS316 | SUS310S | など |
◾️時効処理
ステンレス鋼・耐熱鋼 | SUS630 | SUS631 | SUH660 | など |
非鉄材 | Inconel718 | C1720 | Ti-6Al-4V | など |
当社では、金属熱処理技能士が数名在籍しており、知識・経験をもとに最適な条件をご提案できます。
上記以外の材質・処理条件でも、処理を検討させていただきます。